ユーファイとカラムキン。

昨日は午前中に3人、午後に1人の赤ちゃんが産まれました。

サイタニー郡病院では、月に約40件ほどのお産があります。
一日平均すると、1、2件なので、昨日はたくさん産まれたことになります。

昨日産まれた中でも、午後の産婦さんは、何と!!40才で今回9人目!!
1人女の子を生後7日目に亡くしたそうですが、あとの8人はみんな元気だそうです。

40才で9人目ともなると、出血などのリスクがかなり高いのですが、無事に産まれてよかったよかった。


郡病院のお産は、「いきめ〜〜〜!!」と無理やりいきまされたり、お腹を押されたり、麻酔無しで切開されたり、子宮口が全開になったら早く出してしまおう!というお産で、産婦さんに優しいお産ではありません。
産まれた後も、また麻酔無しの縫合だし・・・ラオスのお母さん達は、本当に我慢強い。


日本だと、産後2時間はベッドの上で過ごして、それからベッドに移動するのですが、ここでは場所がないので、縫合が終わると、自分で分娩台を降りて、歩いてベッドに戻ります。


そして、5〜6時間休んで、その間に授乳をし、トイレに行き(ほとんど家族の介助)、赤ちゃんの予防接種が終わったら家に帰ります。
食事や身の回りのお世話は家族や親戚がするので(そのため、1人入院すると付き添いが5、6人はいる。)、点滴がなければ、家に帰ったほうが楽、というわけです。



家に帰ると、ラオスのお母さんは「ユーファイ」をします。

直訳すると、「火の中にいる」ということになりますが、もちろんそんな恐ろしいことではありません。
お母さんが寝るベッドの下や横に炭を置いて、温めるのです。



↑お母さんの横には、ぐるぐる巻きにされた赤ちゃんが。

お母さんはここで数日から1ヶ月間過ごします。期間は、村や家によって異なります。

ラオス人に意味を聞くと、「子宮を乾燥させる」と言われました。

逆に「日本ではしないの?」と聞かれ、「1ヶ月間はいつでも横になれるように、布団を引きっぱなしにするけど、炭は置かないよ。」と答えると、「それで子宮は乾くの???」と驚かれます。

ラオスのお母さんは、温めたベッドの上で、薬草を煮出したお茶をたくさん飲みます。



これを飲むと、母乳がたくさん出るそうです。

身体を温めるのはいいことなのですが、中には火傷をしたり、赤ちゃんと離れて過ごすことで赤ちゃんが欲しがる時に、すぐに抱っこしたり授乳ができないということがあります。
なので、退院の時には、ユーファイは強く焚きすぎないこと、温度に注意して赤ちゃんを側に置いておくことを伝えるようにしています。


そして、ラオスのお母さんにはもう一つ、「カラムキン」があります。
いつもは食べていいけれど、産後には食べてはいけないタブーな食べ物。
それがカラムキンです。

これも、地域によって異なるのですが、私が今まで聞いたものだと、白い牛の肉、しっぽが赤い魚、パデーック(ラオスにある魚を発酵させた調味料。めっちゃ臭い。)、パパイヤ、あひるなどなど・・・。
これは、数ヶ月から長いものだと1年以上食べられないそうです。

なぜそれを食べてはいけないか、理由は分からないけれど、昔からやってきたことで、やらないことで病気になったり、何か悪いことが起きるのが怖いからやる、という感じです。

しかし中には、産後はもち米と塩だけ、という極端な場合もあるそうです。
そうなると、産後のお母さんはもちろん、母乳を飲んでいる赤ちゃんも栄養不良になります。

「『カラムキン』はだめ」、というのは簡単ですが、ずっとラオスの人たちがやってきたものを100%否定してしまうのはよくありません。なので、カラム以外のもので、積極的に食べたほうがいいものを勧めていきたいのですが、なかなか一人一人個別には難しいのが現状です。
スタッフからは、あまりカラムは厳しくしすぎないよう伝えていますが、村に帰ってしまうと現状は分かりません。

そのためにも、POMOSOでやっている健康教育で、正しい知識を持ったお母さんが増えていって欲しいなあと思います。


では、最後に・・・。

以前産後のお母さんが退院するときに、一緒に村までついて行った時の写真があるので、それを紹介したいと思います。
この時は、1人で車に乗せてもらい、一緒に行ったものの思ったより遠く帰れなくなったので、結局泊めてもらったのですが、とてもいいご家族でした〜。
(もちろん次の日、病院職員には「1人で行ったら危ない!!」と怒られましたが・・・。汗)


↑赤ちゃんとともに帰宅すると、すぐに近所の人や親戚がお祝いにやってきます。


↑そして、どこからともなく(笑)村のおばあさんがやってきて、バーシーの糸をまずはお母さんの首に巻きます。


↑次に、赤ちゃん。赤ちゃんには、手首に巻きます。


↑お母さんのベッドの横には、炭が。


↑火がついた炭を、ベッドの下にも置きます。下はコンクリートなので大丈夫。
このお母さんは、ここで2週間過ごすそうです。


このような、ラオス独特の風習はおもしろいなあと思います。


きっと意味があって昔からやってきたものだと思うので、これを無くすのではなく、注意するところの情報は伝えつつ、いいところはそのまま残していってもらいたいなあと思います。